好きがまだ見つからなくても大丈夫。子どもの「やってみたい!」を育てる高津区の4日間

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「宇宙人に会って、一緒に遊びたい」

「K-POPのダンスとメイクをやってみたい!」

「農業について、もっと知りたい」

これらは具体性も、実現までの距離も違う、子どもたちの「やってみたい!」です。

この中で、立派なものはどれでしょう。実現できそうなものから始めるべきでしょうか。

高津区で開かれる「殻をやぶれ!わくわくたまごプロジェクト2026」(認定NPO法人キーパーソン21主催、以下「キーパーソン21」)では、子どもの言葉を「できる」「できない」や、「子どもらしい」「しっかりしている」で仕分けません。まずはそのまま受け止め、何に心が動いているのかを一緒に探ります。

最初に口にしたことが、最後に行うことと違っても構いません。「それは少し違う」と言い直したり、ほかの子のアイデアに触れて考えが変わったりすることも、大切な過程です。

対象は、主に川崎市在住・在学の小学4年生から中学3年生。かながわサイエンスパーク(KSP)を主な会場に、自分の「好き」の奥にある、わくわくエンジン®という原動力を見つけ、地域の大人と作戦を立て、実際の一歩を踏み出す全4日間のプログラムです。

参加費は保険付きで無料、定員は16人。申込締切は2026年9月30日(水)です。

「殻をやぶれ!わくわくたまごプロジェクト2026」の詳細・申込を見る

「宇宙人と遊びたい」を、できる・できないで終わらせない

過去に参加した一人の女の子は、「宇宙人に会って、一緒に遊びたい」と話しました。

すぐに実現方法を考えれば、「宇宙人には会えない」で終わってしまいます。しかし、大人たちはその言葉を否定せず、まず問いかけました。

「宇宙人を地球に呼ぶ?」

本人の答えは、呼びたいわけではない、というものでした。地球に来たら空気が合わず、宇宙人が死んでしまうかもしれないと考えていたからです。「一緒に遊びたいの?」と聞かれても、それも少し違いました。

大人の提案に合わせるのではなく、本人が「それではない」と言える。やり取りを重ねるうちに見えてきたのは、その子が「頭の中で想像したものを形にし、人に見せること」に心を動かされるということでした。

女の子は国立科学博物館で宇宙について調べ、その知識も材料にしながら、自分が想像する宇宙人をスケッチブックに何体も描きました。鼻の長い宇宙人など、のびのびと考えた姿を、最後はみんなの前で発表しました。

ここで起きたのは、大人が夢のような思いつきを立派な学習テーマへ変えたことではありません。最初の言葉を入口に、「自分は何を面白いと思っているのか」を本人が確かめ、今できる一歩を自分で選んだのです。

参加した子どもが描いた、火星にいるかもしれない宇宙人のスケッチ。『ゾウをまねした!』『鼻を長くした!!』と、発想の理由も書き込まれている

「やりたいことが分からない」子も、そこから始められる

キーパーソン21が保護者に伝えているのは、「主体性のない子なんか、一人もいません」というメッセージです。

自分から動かないように見える子どもも、本当に「興味があるものがない」とは限りません。好きなことをうまく言葉にできない。「こんなことを言ったら変だと思われるかもしれない」とためらう。気持ちはあっても、誰に聞き、どう動けばよいのか分からない。そんな状態にいることがあります。

だから、このプロジェクトでは、完成した夢や実現可能な計画を持って参加する必要はありません。ゲームや対話を通じて好きなことを挙げ、どんな話もまず肯定的に受け止めます。最初に出した案を途中で変えることもできます。

例えば、次のような子どもも参加の出発点に立てます。

  • 好きなことや得意なことが、まだよく分からない
  • 興味はあるものの、調べたり出かけたりするところまでは進んでいない
  • 自分から「やってみたい!」と言う機会が少ない
  • 人前で話すことや、知らない大人と接することに慣れていない
  • 結果を競うのではなく、自分なりの挑戦をしてみたい

小学4年生から中学3年生までの間では、考え方や言葉にする力にも幅があります。活動では、関心やおおよその年齢を踏まえてグループとサポーターを組み合わせます。年上の子が当然のように年下の子を引っ張るのではなく、それぞれが自分の話をできる環境を整えます。

「好きなもの」の奥にある、心の原動力を探す

プロジェクトの中心にあるのが、「わくわくエンジン®」という考え方です。キーパーソン21はこれを、誰の中にもある「わくわくして、動き出さずにはいられない心の原動力」と説明しています。

例えば、同じ「野球が好き」でも、理由は同じではありません。作戦を考えることに夢中になる子、仲間と活動することが楽しい子、練習を通じて成長を感じることがうれしい子もいます。

「野球」は好きな対象です。その奥にある「作戦を考える」「仲間と取り組む」「成長を感じる」といった、その子を動かす理由が、わくわくエンジン®です。

その理由が分かると、興味は一つの対象に閉じません。「作戦を考えること」が原動力なら、歴史上の戦略やゲームづくりにも心が動くかもしれません。今好きなものを将来の職業へ直結させるのではなく、自分はどんなときに生き生きするのかを知ることが、新しい選択肢につながります。

わくわくエンジン®は診断テストで決めるものではありません。「それのどこが面白いの?」「ほかには?」と大人が聞き、本人の「そう」と「それは違う」の両方を受け止めながら探します。

出会う、考える、やってみる。4日間で「動き方」を経験する

2026年度のプログラムは、10月から11月にかけて4回行われます。

1日目:出会って、自分の「好き」を探す

午前は、地域で働く人の話を聞く「おもしろい仕事人がやってくる!」。午後は、「すきなものビンゴⓇ」と「やってみたい!を考えよう」を行います。

今年登壇するのは、KSPに拠点を置く株式会社ちとせ研究所のシニアマネージャー、柳町みゆきさんです。バイオテクノロジーの仕事に加え、オーストラリア横断やビール修行、サーフィンなど、自分の興味に従って行動してきた経験が語られる予定です。

午後は、子どもと地域の大人や学生が、好きなものをゲーム形式で語り合い、まだ決まっていない「やってみたい!」を対話の中から探します。

2日目:「やってみたい!」の作戦を立てる

2日目は、「やってみたい!をやってみる」ために、「何をすれば一歩進めるか」「誰に聞けばよいか」「何が必要か」を仲間や大人と考える作戦会議です。

地域の大人や高校生のサポーターは、事前に研修を受けます。実現しやすい計画を子どもの代わりに作るのではなく、子どもの話を聞き、問いかけ、考えを整理する壁打ち相手になります。

途中で最初の案が変わることもあります。過去には、「陸上競技のハードルをやってみたい!」と話していた子が、対話やほかの子のアイデアを通じ、ミニチュアの家と人を作ってプログラミングで動かす挑戦を選びました。活動は変わっても、根底には「たくさんの仲間と楽しく遊ぶ」という同じ原動力がありました。

案を変えるのは、最初の発言が間違っていたからではありません。話し、聞き、考え直す中で、本人がより「やってみたい!」と思う方向を選び直した結果です。

ホワイトボードに考えを書き込む子どもたち。サポーターがそばで対話を支える(2025年度の様子)

3日目:「やってみたい!をやってみる」

3日目は、作戦会議で考えたことを、地域の人、企業、学生などの力を借りながら実際に試します。訪問する、質問する、買い物をする、作る、練習する。大人は連絡や移動、安全面を支えますが、活動の主語はあくまで子どもです。

やってみたら想像と違ったり、途中で別のことに関心が移ったりすることもあります。そんなときも決まった正解に当てはめるのではなく、本人が納得できる次の一歩を考えます。

会場までの交通費は自己負担ですが、「やってみたい!」の実行に必要な交通費、入場料、材料費などには一部補助があります。

4日目:「やってみたい!をやってみた!」の発表

最終日は出来栄えを競うのではなく、何を考え、どんな作戦を立て、何を試し、途中で何が変わったのかを、自分で選んだ方法で伝えます。司会も子どもたちが担当します。

気持ちを探し、誰かと作戦を立て、力を借りて試し、振り返る。この経験が、次に「やってみたい!」と思ったときの足場になります。

入口も、一歩の大きさも、それぞれ違う

過去に参加した子どもたちの出発点はさまざまでした。

星に興味を持つ子どもは、普段は発表で手を挙げたがらないタイプだったといいます。プロジェクトをきっかけに親子で星空を見に行き、プラネタリウムや星空ナビゲーターの体験へ関心を広げました。最終日には発表だけでなく、司会にも挑戦しました。

宇宙に関する展示を見学する参加者(2025年度の活動例)

K-POPのダンスとメイクに挑戦した子どもは、人前で一人で踊ることに不安を感じていました。家でも練習し、サポーターや専門家に衣装やメイクを手伝ってもらい、最後は一人で踊り切りました。その姿を見た父親も、自分自身の新しい挑戦について考えるようになったと語っています。

K-POPダンスに挑戦する参加者(2025年度の活動例)

農業に関心を持っていた中学生は、興味はあっても、忙しさもあり、調べたり現地へ出かけたりするところまでは進んでいませんでした。大人と作戦を考え、農場や店を訪ねた後、「やりたいことを実現するための、やり方を一つ知れた」と振り返りました。

いちご農園を訪ね、葉や茎を間近で観察する参加者(2025年度の活動例)

三人の変化は同じではありません。発表で手を挙げる。緊張しながら一人で踊る。興味のある場所へ自分から足を運ぶ。いずれも、参加前と比べたその子なりの一歩です。

親や先生とは違う「第三の大人」が伴走する

大人が先回りして計画を作り、完成へ導けば、活動の主語は大人に変わります。このプロジェクトで大人に求められるのは、子どもの話を受け止めて考えを整理し、必要な人や場所、安全な挑戦の土台を用意しながらも、「次にどうしたいか」を本人に返すことです。

大人の提案に「それは違う」と言えることも大切です。「宇宙人を呼びたいわけではない」という言葉が受け止められたように、評価を急がない関係があるからこそ、子どもはまだまとまっていない考えを口にできます。

農業に挑戦した中学生も、最初は大勢の大人を少し怖いと感じていました。しかし、一緒に考えてもらううちに話しやすくなり、最後には「大人も子どももなくて、人間として仲良くなった」と表現しています。

親や先生とは異なり、この場で出会う大人は、成績を付けたり生活を指導したりする人ではありません。子どもの興味を一緒に追いかける「第三の大人」です。

パソコンを操作する子どもと、一緒に画面を見るサポーター(2025年度の様子)

高津区の「人・仕事・場所」が、挑戦の足場になる

地域の企業や住民が提供できるのは、資金や物品だけではありません。そこで働く人の経験、専門知識、仕事の現場、地域とのつながりそのものが、子どもの「やってみたい!」を現実の一歩へつなぐ資源になります。

ホテルに興味を持った子どもが従業員へ話を聞く。農業に関心を持った子どもが農場を訪ねる。ものづくりをする子どもが地域の店へ材料を買いに行く。子どもの関心と地域にある人・仕事・場所が結び付き、高津区や川崎市そのものが学びの場になります。

関わる大人にとっても、子どもの自由な発想を否定せず、「なぜやりたいのか」「どうすれば一歩進めるか」と考える経験は、自分の対話の仕方を見直す機会になります。キーパーソン21は、こうした姿勢が職場で部下の提案や主体性に向き合う際にも生かせると話しました。

以前参加した子どもが成長し、高校生サポーターとして戻ってくる例も生まれています。応援された子どもが、次は誰かを応援する側になる。子どもの挑戦は、大人の学びや新しい地域のつながりも生み出しています。

子どもの「やってみたい!」を、一人で実現させるのではなく、地域の中で一緒に考える。どんなことを言ってもよいこと、途中で考えが変わってもよいこと、困ったときは誰かの力を借りてもよいことを、実際の関係の中で経験する4日間です。

参加を迷っている保護者へ

「まだやりたいことが決まっていない」「人前で話すことに慣れていない」「知らない大人の中に入れるか心配」といった不安があっても、完成した目標を用意する必要はありません。好きなことを探し、話しながら自分なりの一歩をつくること自体が、プログラムに含まれています。

参加方法や安全面などを詳しく確認したい人に向け、2026年9月13日(日)にはZoomによる事前説明会も予定されています。初日の「おもしろい仕事人がやってくる!」と午後のワーク、最終日の発表は保護者も観覧できます。初日には任意参加の保護者座談会も開かれ、子どもの「好き」や「やってみたい!」を家庭でどう応援できるかを一緒に考えます。

KSP内で行われた2025年度の活動。テーブルごとに分かれ、子どもたちとサポーターが一緒に参加する

「殻をやぶれ!わくわくたまごプロジェクト2026」開催概要

項目内容
対象主に川崎市在住・在学の小学4年生〜中学3年生
定員16人(応募多数の場合は抽選)
参加費無料(保険付き)。会場までの交通費は自己負担。「やってみたい!」の実行に伴う費用は一部補助あり
会場かながわサイエンスパーク(KSP)西棟2階 RESTAURANT & GALLERY PALETTE(川崎市高津区坂戸3-2-1)
日程2026年10月25日(日)、11月3日(火・祝)、11月15日(日)、11月29日(日)
申込締切2026年9月30日(水)
事前説明会2026年9月13日(日)13:00〜14:00、Zoom開催
詳細・申込公式ページ (https://wakutama.hp.peraichi.com/)
問い合わせinfo@keyperson21.org

主催:認定NPO法人キーパーソン21
応援企業:HOTEL ARU KSP、株式会社大山組、株式会社エヌアセット(順不同)
後援:川崎市教育委員会、かわさきFM

応募多数の場合は抽選となり、当選者には10月7日(水)までに参加案内メールが送られます。関心のある方は、締切前に公式ページで詳しい参加条件をご確認ください。

※わくわくエンジン®は認定NPO法人キーパーソン21の登録商標です。

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この記事を書いた人

いけだ