⽇常に彩りを添える、ステンドグラス作家・Sakiさんの作品。

現代の暮らしに寄り添うデザイン

千年新町の『千年共店Cafe’』で開催されたマルシェにて、販売されたSakiさんの作品。

高津区を拠点に活動するステンドグラス作家・Sakiさん。今回は、彼女が愛してやまない「アートガラス」の魅力、そして作品に込められた想いについて、ご紹介します。「ステンドグラス」と聞くと、どこか伝統的で、少しだけ敷居が高いイメージ。しかし、Sakiさんが提案するのは、現代のライフスタイルに自然と溶け込む「日常の器」です。作品づくりの根底にあるのは、「日常の中で当たり前のように光を楽しんでほしい」というシンプルで温かな願いです。

凛とした佇まいと、柔らかな光を感じる、切り株をモチーフにしたペンスタンド。

これまでのステンドグラスは、教会などの建物の窓や美術品としての側面が強く、一般家庭に取り入れるには少し「仰々しい」と感じられることもありました。Sakiさんは、そのトラディショナルな技法を大切にしながらも、現代のインテリアやライフスタイルに自然と溶け込むよう、徹底した「リデザイン」を行っています。

光の透け具合がとても美しいサンキャッチャー。

日々の暮らしの中で自然に使われ、光とともに過ごすためのステンドグラス。同じガラスでありながら、光の入り方ひとつで表情を変え、暮らしに静かに寄り添います。

影まで愛おしくなる、手吹きガラスのやわらかな光

ランバーツガラスを使用した作品。日常の中に、光がそっと寄り添ってくれているようです。

アートガラスの中でも、Sakiさんの作品に多く使われているのが、世界最高峰の品質を誇るドイツの老舗・ランバーツ(Lamberts)社の表情豊かなガラス素材です。ステンドグラスに使われるガラスには、大きく分けて機械で作られるものと、職人の手によって作られるものがあります。ランバーツ社は、今では数少なくなった「アンティーク・グラス(手吹き法)」を守り続けているメーカーです。ランバーツガラスの特徴は、機械的に均一ではない、ゆらぎのある質感にあります。ガラスの中にわずかな濃淡や揺らぎを含み、光を通すと、まるで水面のように柔らかく拡散します。

光を通した時に、一番美しい表情を見せてくれるランバーツガラスのボウル。

その光は決して強すぎず、部屋全体を主張するものでもありません。ただ、そこにあることで空気が少し変わる。時間の流れが、ほんの少し穏やかになる。そんな静かな魅力を持っています。熱せられたガラスの塊に息を吹き込み、円筒状に膨らませた後、切り開いて一枚の板にする。この伝統的な工程を経て生まれるガラスには、現代の工業製品にはない圧倒的な「生命感」が宿っています。

ガラス素材と光の透過を活かす作品

押し花を挟んだ小物トレー。「自然物とステンドグラスの調和」がコンセプトの作品です。

Sakiさんは「ガラスそのものが既に美しい。だからこそ、その美しさをどう切り取り、どう繋ぎ合わせるかに、作家としての魂を込めています」と語ります。ステンドグラスの魅力は、単なる「色」ではなく「光の透過」にあります。不透明な絵画とは異なり、背後にある光の種類(太陽光、LED、白熱灯)によって作品はまったく別の顔を見せます。彼女の作品は、この「光との対話」を最も楽しめるように計算されており、手に取るたびに新しい発見をもたらしてくれます。

高津区のアトリエから、心を込めて

Sakiさんの作品と、その作品が制作されるアトリエの外観写真。

Sakiさんが日々、作品を紡ぎ出している場所。それが高津区に構えた、アトリエです。アトリエの窓からは、季節ごとに移ろう光が差し込みます。その光の中でガラスの色を吟味し、型紙を引き、新しい形をまず模型の中で探し、丁寧にカットしていく。一つひとつの工程は非常に緻密で、根気を要する作業です。しかし、高津区の落ち着いた空気感が、彼女の創作活動にリズムと安定を与えています。

日常に彩りを添える存在へ

色とりどりのステンドグラスが、部屋を優しく彩ります。

Sakiさんの作品は、単なる器ではありません。それは、見る人の日常に「光の彩り」を添え、心にゆとりをもたらす存在です。もし、どこかの展示会場で彼女の作品に出合ったら、ぜひ光にかざし、ガラスの中に閉じ込められた光の揺らぎを感じてみてください。きっと、それまでのステンドグラスのイメージが鮮やかに塗り替えられるはずです。現代のインテリアに溶け込み、日々の暮らしを祝福するステンドグラスを、あなたのご自宅に迎え入れてみませんか?

この記事を書いた人

丸山秀樹

丸山秀樹

川崎市高津区在住。江川せせらぎ遊歩道で、カルガモ親子の写真を撮っています🦆