【開催レポート】TAKATSU ART DAYS 油絵体験ワークショップ

自然光が美しく差し込む油絵教室を会場に、油絵アーティストのhachi先生を講師に迎えた油絵ワークショップが開催されました。本ワークショップは、高津大山街道周辺地域の市民企画による活性化を図る、「高津大山街道あすLABO」第5期プロジェクトにおいて採択された企画 ~このまちで、わたしとアートがつながる~ TAKATSU ART DAYS の一環となります。今回のテーマは、キャンバスに油絵の具で描く「海と砂浜」。「油絵の具と友達になろう」を合言葉に、小学生を中心とした14名の参加者が本格的なアート体験に挑みました。当日の制作手順の詳細と、終了後に実施したhachi先生へのインタビューを交えながらレポートします。

天窓からも光が入る、hachi先生が利用しているシェアスペースが会場です。

「油絵」の常識を覆すカリキュラム

ターコイズブルーを塗ると、沖縄の海のようなすごく綺麗なブルーになります。

油絵と聞くと、「乾くのに時間がかかる」「道具が専門的で難しい」というイメージが一般的です。実際、油絵は描いては乾燥を繰り返し、完成までに数ヶ月〜数年かかることも珍しくありません。しかし、hachi先生は「安全のためのルールさえ守れば小さい子でも油絵の楽しさを味わえる。子どもの頃に一枚の絵にじっくり向き合う経験をしてほしい」という想いから、初心者でも短時間で完成させられる独自のカリキュラムを考案しました。

成功のカギは「ハイブリッド技法」と「道具の工夫」

1時間半という短時間で油絵の作品を仕上げるため、今回は以下の工夫がなされました。

絵筆だけでなく、身近な道具を使い、様々な方法で仕上げていきます。
  1. ハイブリッドな画材使用
    下地には速乾性のある特殊絵の具「アキーラ」やアクリル絵の具を使用し、仕上げの層に油絵の具を乗せることで乾燥時間を大幅に短縮。
  2. 身近な道具の活用
    筆だけでなく、スポンジや綿棒を使うことで、技術に頼らず感覚的に描ける手法を採用。
  3. 速乾オイルの調合
    油絵の具に速乾剤を混ぜることで、乾燥時間を早めます。

世界に一つだけの「海と砂浜」ができるまで

会場には、テーマにぴったりの長方形(F3サイズ)のキャンバスがずらりと並びました。

描く前に実際の油絵作品に触れて、絵の具の触感を確かめました。

今日みんなの目標は、『油絵の具とちょっと友達になる』こと。初めての絵の具だから、思った通りにいかないとか、塗っても塗ってもなんかイメージと違うとかもあるかもしれない。けれど、自然にできた模様とか、思いがけない塗り方も、みんなが感じたことを含めて絶対いい『味』と『経験』になるので、私を信じて、頑張ってやってみて!

というポジティブな声かけとともに、制作がスタートしました。

① 準備・下地作り(クレヨン&アキーラ)

まずはクレヨンで、海と砂浜の境界線を「うっすら」と引きます。「海を広く見せるため、砂浜は少なめに」というアドバイスを受け、なだらかなラインを描いていきます。続いて、砂浜と海のベース作りです。特殊絵の具「アキーラ」を使用し、スポンジのザラザラ面でキャンバス上部に緑や黄色を「シュッシュッ」と薄く塗ります。これが後に油絵の具を重ねた際、色に深みを生む土台となります。

海の色に深みを出す大切な準備となります。

② 砂浜の表現(アクリル絵の具)

砂浜部分には、速乾性のある黄土色のアクリル絵の具を使用。大きなスポンジで塗りつぶした後、すぐにキッチンペーパーで余分な絵の具を拭き取り、素早く乾燥・定着させます。さらに、波打ち際に濃い色を叩き込んで「濡れた砂浜(影)」を表現したり、油絵の具がついたスポンジで叩いてザラザラとした質感を出したりと、何層にも工夫を重ねました。

絵の具でキャンバスに描く様々な方法があることが分かりました。

③ いよいよ油絵の具へ(海を描く)

筆先は、パンダの毛?という回答に、思わず触りたくなりました。

ここで主役の油絵の具が登場。バターのように硬いテクスチャーに、子どもたちも興味津々です。「この硬い筆は何の動物の毛でしょう?(正解:豚の毛)」というクイズで絵筆の触感を確かめた後、ターコイズブルーとコバルトブルーを乗せていきます。筆先にオイルを馴染ませ、「トントン」と叩くように色を置くことで、海特有のツヤツヤ感と深みが生まれました。

④ クライマックス:ペインティングナイフで「波」を作る

絵の具は、ペインティングナイフの下側に取り、キャンバスに乗せます。

仕上げは、生クリームのような白の油絵の具を使って「波」を作ります。ここでは筆ではなく「ペインティングナイフ」を使用。パレットで作った絵の具の山を潰さないよう、油絵の具をナイフで「乗せる」イメージでキャンバスへ置くことで、立体的で迫力のある波が完成しました。

生クリームのような山を10個くらい作るのが目的です。

最後は綿棒で砂浜の絵の具を削るようにサインを入れ、世界に一枚だけの作品が完成しました。

本当に砂浜の上に、指でサインをなぞったみたいです。

hachi先生が語る想い

ワークショップ終了後、hachi先生にお話を伺いました。

油絵の具は、化学反応で固まるので、制作に時間がかかるそうです。

——油絵をはじめたきっかけは?
「私自身、10歳の時に『学展』という学生のための油絵コンクールで見た、中高生の油絵に感動して始めたのがきっかけです。水彩とは違い、重ねるほどに深みが出るのが油絵の魅力。子どもたちには、その時にしか描けない一枚が絶対あると思うので、そんな経験をしてほしいなと思い、活動しています。」

——参加者のみなさんから感じたことは?
「1時間半という凝縮された時間の中で、皆さんが非常に高い集中力を発揮していたのが印象的でした。『うまく描こう』とするのではなく、絵の具の凹凸や混ざり具合を楽しんでくれていましたね。同じ手順でも、海の色味や波の形など、一人ひとりの個性が爆発した作品になり、私自身も感動しました」

今後の展開

参加した子どもたちは、充実した表情で作品を見つめていました。「油絵は難しい」というハードルを下げ、楽しみながら本格的なアートに触れる、まさに「絵の具と友達になる」目標が達成された一日となりました。

【作品展示のお知らせ】
今回制作された個性豊かな「海と砂浜」の絵は、3月15日に開催される「高津まちなか美術展」にて展示される予定です。

hachi先生は、従来の油絵の枠にとらわれない、砂やラメを使った「テクスチャーアート」など、新しい表現のワークショップも展開中。こちらも3月1日に川崎市大山街道ふるさと館にて開催される「春のふるさと館まつり」のステージを飾る予定です。ぜひ、子どもたちの情熱がこもった作品を間近でご覧ください。


TAKATSU ART DAYSとは

📸 Instagram
@takatsu_artdays

この記事を書いた人

丸山秀樹

丸山秀樹

川崎市高津区在住。江川せせらぎ遊歩道で、カルガモ親子の写真を撮っています🦆